芸大美術館ミュージアムショップ > 額装品 > 額装品『悲母観音』狩野芳崖
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狩野芳崖 (かのうほうがい 一八二八‐一八八八)
「悲母観音」 (ひぼかんのん)
絹本着彩
原図寸法 195・8×86・1センチ
重要文化財
明治期に伝統絵画の改革を目指したフェノロサと出会い、その実践を担った芳崖の絶筆。彼の実験精神の成果であり、近代日本画の出発点である。弓なりになった空間の中空に観音がふわりと浮かぶ。観音の視線をたどると、右手の水瓶から弧を描いて落ちる雫が、光輪を負って合掌する嬰児に注ぎ、その衣は妙義山に想を得たという蛾々たる山脈へ垂下する。その先は底知れぬ深淵。狩野芳崖は、江戸末期には木挽町狩野家の四天王に数えられる絵師であったが、日本の伝統絵画の改革を図ったフェノロサと出会うことにより、その実践を担うことになる。その成果を示すと見直される、五〇代後半以降の作品では、統一的な明暗表現の意識が芽生、ダイナミックな独自の構図法が認められが、それらはともすれば劇画的で大仰な表現に傾きがちであった。ところが本図においては、そのような幣は払拭され、静けさが画面を支配している。芳崖の門人であった岡不崩「しのぶ草」(日英社、明治四三年)によるなら、芳崖は本図の完成直前にして薨れてしまったこと、顔料の実験をおこなったため、退色して金が浮いて見えることが指摘されているが、それでもなお本図が彼の不屈の努力の到達点であり、近代日本画の出発点を示していることに変わりはない。
1999年 『開館記念 芸大美術館名品展』 図録より