芸大美術館ミュージアムショップ > 図録 > 図録『大地への回帰 RECURRENCE TO EARTH 退官記念 漆芸教授 大西長利展』

大西長利の作品は、一部の抽象的なものを除くと、形としては実用的な器である。しかし作品をじっと見ていると、何かしら不思議な、情念のようなものが漂ってくるのを感じ取れるだろう。そこには使うことをのみ目的とした機能主義的なものや、形や表面の装飾に重きを置く表現主義的なものとは、明らかに異なる独特の雰囲気が色濃く現れている。漆芸は陶芸ににおける陶土、磁土や金工における各種の金属といった工芸素材と違って、樹液という生きている素材を用いる工芸であり、無機質の素材を取り扱うものとは肌合いがちがうから、という理由とも思われるが、それだけではないようだ。器が制作の中心だからといって、大西長利を単なるクラフト作家とみる見方からは、彼の作品のこのような雰囲気をよみとることはできない。大西漆芸の創り出す世界は、実用性のみ追及する、あるいは芸術的表現を求めるといったそんなに単純なものではなさそうなのだ・・・・(図録より)